そろそろ暮らしになれてきたと思うので、ニジサンの人生設計を考えてみようと考えた。
「問題はまず、ニジサンには戸籍がないということだね」
「こせき?」
「ないと不便なんだ。ガソリンのない自動車みたいに」
たとえにピンと来ないのか、ニジサンは台所に移動させたサボテンの方を見つめている。テレパシーで会話でもしているのだろうか。
「戸籍がないと、住民票が作れない。住民票がないと、保険にも入れない。それから、学校にも行けない」
「べつに、困らない」
困らないらしい。でも僕は困る。
島村に相談してみると、あっさり解決してしまった。
「作れるぜ、住民票」
「え、作れんの?」
「真っ当な代物かは知らないけどな。奴隷商人から買い上げた場合、自動的に奴隷はおまえの所有物になる。耳の後ろだったかな。チップが埋め込まれてるんだよ。そいつで現在の所有者を記録している」
「なにそのサイバーなテクノロジー」
「おまえってニュース見ないもんなぁ」
ということで、その所有者の記録とやらを提示すれば、住民票は作れるようだった。いつの間にそんな世の中になっていたのだろう。
ニジサンの耳の後ろを確かめてみようとしたが、くすぐったがるので触れない。島村はよく嘘か本当かわからない話をするから面倒くさい。
後日、ニジサンを連れて村役場へ行くと、いとも簡単に住民票が交付された。戸籍とかそういうのはわりとスルーできるらしい。さすがはここみん村。
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