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スクラップ帳

村役場に保管されているかもしれない。
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ここみん霊園

 あ、こんにちは。え? あぁ、そうですね、こんばんは。お祭りも終わってしまいましたね。あなたは行かれましたか? いえ、私は、ずっとここにいましたから。
 違いますよ、ここで働いてるわけではなくて……時間がよろしければ、ご説明いたしますが。
 はい、まあ立ち話で申し訳ないですが。
 私はもともと、この村の出身ではないんですよ。いえ別に、親類や知人が住んでいるわけでも、観光でも旅行でもありません。
 デジャヴってわかりますか。日本語では既視感、と呼ばれているものです。この村に来る前は、私はずっと既視感に嘖まれていました。
 毎日毎日、この展開は前にもあった、この光景はもう見たことがある、この瞬間はかつて過ぎたはずだ……そういう感覚に襲われるんです。予知なんてレベルじゃなく、知っているものとして、それまでにはなかったはずの記憶が呼び起こされるんですよ。
 だっていうのにその既視感は、私が生活するうえで何の役にも立ちはしない。何しろそれは瞬間的な既視感で、何分後にどうなるとか、何時間後にどうなるかなんていう予知的なものじゃないんです。ただ、かつて見たことを知っている。そのことが瞬間的にわかってしまう。断片的に切り取られたデジャヴです。気持ち悪いったらありゃしないですよ。
 そしていつしか私はこう思うようになったのです。これはきっと、何度も同じ人生を繰り返している私自身への警鐘なのだ、と。
 見たことがある光景ばかりがよぎるのは、本当に見たことがあるからで、それは私が何度も何度も時を遡り、同じ人生を繰り返しているからだと、そう確信したんですよ。
 ですが、ここにやってきてぴたりと既視感が止みました。まるで知らない土地。まるで知らない住人。まるで知らない風景。この瞬間は、まだ過ぎていない。そうです。私の繰り返しの人生は、終着地を見つけたのです。
 それでどうして墓場にいるのかですって?
 決まってるじゃないですか。ここが私の人生の終着地なのだから、ここに私の墓があって当然です。
 私はそれを探しに、毎日ここに来ているんですよ。
 今日こそはきっと、私の墓碑が見つかるに違いないんです。でなければ明日には。そうでないなら明後日に。私は諦めません。ここが終着地なのですから。

 話し終えると、彼はふらふらと闇夜に消えていった。
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