結局、ニジサンの髪は僕が切ってあげた。
髪型には何のこだわりもないようだったので、涼しげなショートカットに変貌を遂げたけれど、僕自身はプロの美容師でもなんでもないので、出来栄えに関してはなんとも言いがたい。
試しに友人の島村に見せてみると、
「より子供らしくなったな」
とのことなので、若く見られることは悪いことではないはずなので、良いとしよう。
今日はニジサンと一緒に公園へ出かけた。
途中、最近オープンしたばかりのアイスクリーム屋さんに寄り、チョコミントを二つ注文した。始めの十分ぐらいはニジサンにも選ばせてみたのだが、一向に決まる気配がないので、独断で決定させていただいた。味についての感想は特になかったけれど、頬が緩んでいたので、たぶん気に入ったのだろう。
雲の少ないカラッとした天気だったから、アイスの溶けるスピードと食べる速度がかみ合わなくて大変だった。案の定、二人とも指先がべとべとになってしまい、普段からハンカチもティッシュも持ち歩かない僕のエコ主義を揺るがす小事件となった。
公園に到着しても、特にすることがあるわけではなかった。陽射しが強いから読書には向かないし、そもそも公園まで来て読書というのも味気ない。ニジサンも珍しくノートを開く様子を見せない。というか、アイスのコーンを齧るのに夢中のようだった。
足もとに映った自分の影を十秒ほど見つめてから、晴れ上がった空を見上げる。見つめていた影が白く浮かんで見えた。色知覚による対比現象、つまりは残像というものらしいけど、詳しいことはよく知らない。
なんとなくニジサンにも教えてみる。影送りっていうらしいよ、と言うと、不思議そうに首をかしげた。
「影は、地面からはなれると白くなるの?」
「いや、そういうわけでもないと思うけど」
どうして白くなるのかという事は、原理的な説明は調べればあるのだろうけど、納得してもらえそうにはない。
せっかくの青空なので、二人でしばらく影送りをして遊ぶことにした。
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