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ここみん霊園

 あ、こんにちは。え? あぁ、そうですね、こんばんは。お祭りも終わってしまいましたね。あなたは行かれましたか? いえ、私は、ずっとここにいましたから。
 違いますよ、ここで働いてるわけではなくて……時間がよろしければ、ご説明いたしますが。
 はい、まあ立ち話で申し訳ないですが。
 私はもともと、この村の出身ではないんですよ。いえ別に、親類や知人が住んでいるわけでも、観光でも旅行でもありません。
 デジャヴってわかりますか。日本語では既視感、と呼ばれているものです。この村に来る前は、私はずっと既視感に嘖まれていました。
 毎日毎日、この展開は前にもあった、この光景はもう見たことがある、この瞬間はかつて過ぎたはずだ……そういう感覚に襲われるんです。予知なんてレベルじゃなく、知っているものとして、それまでにはなかったはずの記憶が呼び起こされるんですよ。
 だっていうのにその既視感は、私が生活するうえで何の役にも立ちはしない。何しろそれは瞬間的な既視感で、何分後にどうなるとか、何時間後にどうなるかなんていう予知的なものじゃないんです。ただ、かつて見たことを知っている。そのことが瞬間的にわかってしまう。断片的に切り取られたデジャヴです。気持ち悪いったらありゃしないですよ。
 そしていつしか私はこう思うようになったのです。これはきっと、何度も同じ人生を繰り返している私自身への警鐘なのだ、と。
 見たことがある光景ばかりがよぎるのは、本当に見たことがあるからで、それは私が何度も何度も時を遡り、同じ人生を繰り返しているからだと、そう確信したんですよ。
 ですが、ここにやってきてぴたりと既視感が止みました。まるで知らない土地。まるで知らない住人。まるで知らない風景。この瞬間は、まだ過ぎていない。そうです。私の繰り返しの人生は、終着地を見つけたのです。
 それでどうして墓場にいるのかですって?
 決まってるじゃないですか。ここが私の人生の終着地なのだから、ここに私の墓があって当然です。
 私はそれを探しに、毎日ここに来ているんですよ。
 今日こそはきっと、私の墓碑が見つかるに違いないんです。でなければ明日には。そうでないなら明後日に。私は諦めません。ここが終着地なのですから。

 話し終えると、彼はふらふらと闇夜に消えていった。
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公園

 結局、ニジサンの髪は僕が切ってあげた。
 髪型には何のこだわりもないようだったので、涼しげなショートカットに変貌を遂げたけれど、僕自身はプロの美容師でもなんでもないので、出来栄えに関してはなんとも言いがたい。
 試しに友人の島村に見せてみると、
「より子供らしくなったな」
 とのことなので、若く見られることは悪いことではないはずなので、良いとしよう。
 今日はニジサンと一緒に公園へ出かけた。
 途中、最近オープンしたばかりのアイスクリーム屋さんに寄り、チョコミントを二つ注文した。始めの十分ぐらいはニジサンにも選ばせてみたのだが、一向に決まる気配がないので、独断で決定させていただいた。味についての感想は特になかったけれど、頬が緩んでいたので、たぶん気に入ったのだろう。
 雲の少ないカラッとした天気だったから、アイスの溶けるスピードと食べる速度がかみ合わなくて大変だった。案の定、二人とも指先がべとべとになってしまい、普段からハンカチもティッシュも持ち歩かない僕のエコ主義を揺るがす小事件となった。
 公園に到着しても、特にすることがあるわけではなかった。陽射しが強いから読書には向かないし、そもそも公園まで来て読書というのも味気ない。ニジサンも珍しくノートを開く様子を見せない。というか、アイスのコーンを齧るのに夢中のようだった。
 足もとに映った自分の影を十秒ほど見つめてから、晴れ上がった空を見上げる。見つめていた影が白く浮かんで見えた。色知覚による対比現象、つまりは残像というものらしいけど、詳しいことはよく知らない。
 なんとなくニジサンにも教えてみる。影送りっていうらしいよ、と言うと、不思議そうに首をかしげた。
「影は、地面からはなれると白くなるの?」
「いや、そういうわけでもないと思うけど」
 どうして白くなるのかという事は、原理的な説明は調べればあるのだろうけど、納得してもらえそうにはない。
 せっかくの青空なので、二人でしばらく影送りをして遊ぶことにした。

展望台にて

 近頃、仕事の合間の休憩時間になると、村の展望台で煙草を吸う習慣がついていた。食事は専ら、コンビニの栄養補助食品で済ませてしまうため、二分で終わる。
 休日ならともかく、平日の昼間にこんな場所に来る人間はいない。だからそこで見かけた女に関しても、それ以外のものとして認識するのに苦労はしなかった。
 女は、挨拶もせずに愚痴を発した。
「世の中、納得のいかないことが多すぎるのよ」
「……うん?」
「たとえば、幼い頃に初めてグレープフルーツを知ったとき、不思議に思わなかった? なんでこの果実はグレープと名がついているのに、こんなに酸っぱくて苦いんだろうって」
 唐突すぎる疑問だったが、付き合う気になったのは、女の表情がやけに真剣だったからかもしれない。
 煙草に火を点け、鉄柵に寄りかかる。真下に広がる湖水を眺めながら、答えた。
「先にグレープフルーツがグレープフルーツとして名付けられていたのなら、逆にも考えられる」
「だとしたら、グレープフルーツはグレープフルーツ単体でも不思議じゃない? フルーツは果物って意味で、果物は総称なのに、どうしてグレープフルーツって続けて言わなきゃいけないんだろう、って。グレープだけでいいじゃない」
「子供はそんなことで悩んだりしない」
「私は悩んだわ。親にも聞いてみたけど、今までそんな疑問は持ったことがないって顔してた」
「だろうな」
 燃え尽きた灰殻が、落下していく。女の顔は直視したくなかった。
 太陽を覆い隠した曇り空のおかげか、暑さはそれほどでもない。その代わり湿度が高く、じっとりとした汗が首筋を伝うのを感じる。
「結局、お父さんもお母さんも知らなかったから、自分で調べてみたわ。そしたらやっぱり、グレープフルーツの名前の由来はグレープから来てるって書いてあったのよ」
「類似点があったってことだ」
「香りが似てるからだとか、房状の実りかたが同じだからだとか、それらしい説明が書いてあったけど、私は納得できなかったわ。だって色も形も味もぜんぜん違うんだもの」
「ぜんぜん、ってほどじゃあないだろう」
「ぜんぜんよ。大きさ、重さ、手触りに口触りに歯触り、何もかも違うじゃないの」
「なら、ブドウって呼べばいい」
「ブドウは日本語じゃない」
「あんたの言葉も日本語だが」
「じゃあ、グレープフルーツは葡萄果物でいいの、って話よ」
「そういう話だったか?」
「グレープフルーツちょうだいって言ってる人に、ブドウをあげてもいいのかって話よ」
「意味がわからん」
「とにかく私はね、名称はしっかり分かりやすく納得のいく形で統一して欲しいのよ。もう定着してるから、なんてごまかしかたであやふやにされるのは真っ平ごめんだわ」
 それなら、あんたがお化けなのか妖怪なのか幽霊なのか何なのか、はっきりして欲しいもんだ、と思ったが、そのまま尋ねることもせず、展望台を降りた。
 かつて愛した女によく似た面影は、追いかけてくることはなかった。
 生ぬるい追い風がふわり、と背筋を撫でる。
 名前なんて、大した意味はないと、今では思うのだ。

ここみん図書館

 サユリさんは、ここみん図書館の館長だ。
 小さな図書館だけれど、職員は五名もいる。そのうち三匹は猫だけれど、館長は種族差別をしない主義なので、彼らも立派な職員だ。
 職員猫達は、猫用に縫製された腕章を付けている。これがないと、ただの猫と勘違いした利用者が、職員の頭や背中を撫でまわしたり、お菓子を与えたりしてしまうためである。
 もちろん職員といえども猫は猫なので、業務内容は基本的には寝るだけだ。
 整然と並んだ本棚の上には、職員猫専用の寝転がりスペースがあり、そこで職員猫達は自由に寝そべって、うたた寝をする。ただの猫とは違い、本棚で爪を研いだり、本棚を倒して収まっている本をぶちまけたりといった不作法もしない。立派な職員である。
 サユリさんは、そんな職員猫達の世話をしながら、図書館の掃除をする。小さな図書館とはいえ、本棚ひとつひとつに溜まった埃を落とすのは骨の折れる作業だった。
 ある日、職員猫の一匹であるウィスキーが、サユリさんの足下にやってきて、にゃあと鳴いた。
 サユリさんは時刻を確認する。
 食事の時間ではないし、普段ならば猫達は昼寝をしている時間帯だった。
 もう一度ウィスキーを見つめると、再びにゃあ、と鳴いた。
 サユリさんは、猫ではない職員の大塚さんを呼んで、残りの職員猫の様子を見てきて欲しいと伝えた。
 大塚さんは、職員猫とのコミュニケーションに自信がなく、端的にいえば図書館の職員は人だけにするべきだという考えを持っていたが、館長にはその事を話したことはない。小心者だった。
 小心者の大塚さんは、所定の位置にいるはずの職員猫を確認して、戻ってくる。
「どうだった?」
「ラムはいました。シードルがいません」
 職員猫の名付け親はサユリさんで、彼女は無類のお酒好きだった。命名に関して、大塚さんは少しだけ職員猫達に同情しているが、職員猫達は個体名にこだわったりはしないので、特に問題は生じていない。
 シードルは、三匹の職員猫の中で最も年長の、お爺さん猫だった。長い口ひげが白髪になっているのが特徴的で、利用者の中には「長老」や「師匠」などと呼んだりする人もいる。
 図書館中を探したが、シードルは見つからない。サユリさんは、業務を大塚さんに任せて、図書館の外へ探しに出かけた。
 コンビニ、神社、展望台。年寄り猫のシードルが、そう遠くへ行くとも思えない。
 近所をあらかた探し終えても何の手がかりもなく、サユリさんは肩を落として図書館に戻った。もうすぐ閉館の時間だった。
「あ、館長」
 閉館の準備をしていた大塚さんが、サユリさんに声をかけた。
「シードル、戻ってきましたよ」
「本当? よかった……」
 シードルは、お気に入りのフランス文学の棚の上で、ごろりと横になっていた。
 なんでも、頭にシードルを乗せて図書館にやってきた青年がいたらしい。なぜ頭に乗せていたのかは分からないが、無事に戻ってきたのは何よりである。
「あの、館長」
「なぁに?」
 今回の失踪事件を機に、大塚さんは勇気を出して、猫の職員ばかりというのは、やはり問題があるのではないか、という意味の言葉を口にした。
 サユリさんは確かにその通りね、と頷いた。
「猫だけじゃなく、犬にも雇用の機会を広げるべきと思っていたところよ」
 大塚さんは、やはり小心者なので、それ以上の指摘はできなかった。館長にはどうにも適わない。
 ここみん図書館は、本日もつつがなく業務を終了し、閉館した。

Nice Dream

 柔らかい棘が、ゆっくりと胸に刺さる感触があった。なぜ柔らかいかというと、痛みを感じないからだ。
 起きてみれば、夢だと気付く。
 かなしいわけでもなく、苦しくもない。汗ばんでいた額を手の甲で拭い、まぶたをうっすら開く。
 覚醒しても痛まない身体。安全な場所。
 ベランダから注ぐ強い陽射しから逃れるように、彼女は寝返りを打った。
 すぐ傍に、人の息づかい。
 姿を確かめるつもりはなく、音だけをぼんやりと耳にしていた。
「――夢の中で、寝てたわけだ」
「ふうん」
「で、起きた。そしたら、それも夢だった」
「あ、そう」
 ぱらり、と紙がこすれる音。
「つまり夢見ている夢を見ていたのが夢だった、ってことな」
「ややこしくてよく分かんない」
「現実が夢だったら、なんてことはよく言われるけどさ。目覚めてみても、それすら夢の一部だったら馬鹿馬鹿しいと思わねえか?」
 数秒間の沈黙。
 生返事を繰り返していた声が、身じろぐ気配。
「現実は夢みたいにぼんやりしてるわけじゃないし、すぐ分かるだろう」
「寝てる間は気付かないこともあるだろ。頬をつねってみても痛い夢ってあるし」
 頭を通り抜けるだけで、理解まで辿り着かずに雲散していく会話。
 痛い夢、という言葉が、一度だけ耳の奥で反響した。
「……それだったら、目覚めるまでは現実と変わらないってことだよね」
「まぁ、そうだな」
「だったら扱いとしては、っていうか本人の意識としては、目覚める直前までは現実そのものと言い切っても問題ないってことにならない?」
 再び沈黙。
 パチ、と硬いものが弾ける音と、かすかな甘い香り。
 誰かの喉が鳴った。
「目覚めた直後に夢と区分される現実に生きてるかもしれない俺たち、っていうホラー映画はどうだろうか」
「怖すぎるね。そんな夢」
 痛みがなければ、夢でもいい。
 足も腕も頭も、溶けてゆくように眠かった。
 ゆるんでいくままに任せて、日向の影に宿ったまどろみは続く。

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